平和台

練馬区平和台にある会社の寮へ引っ越した。


台地だけあって、坂道は全く無い。 
「地盤が固いから、ちょっとぐらいの地震なんかへっちゃら」と言われたが、高いマンションがないのは、実は地盤が結構ゆるいからだろうか。

美しが丘、緑山、麻生区と、「丘」「山」「森」という坂道の多い場所で暮らしてきた僕にとって、この平らな台地の景色は新鮮だ。  振り返れば、緑の多い、森っぽいところで生活してきた。
部屋に植木を置きたくなるのは、育ってきた環境からか。
山や森のある場所には、神社が結構あるけど、ここではまだお目にかかっていない。

街をちょっと歩いてみると、田畑が多い。
なるほど、ここは昔から野菜の生産地で、近代以降も都市部へ食料を供給していたらしい。
下練馬村は、江戸時代、豊島郡のなかで大村で、石高は最も高かった。

田んぼが多い一方、材木店や金属加工店などの町工場も多い。 工業高校も近くにある。
農業が盛んだっただけに、農作業の道具を作る職人さんたちが少なからずいたのだろうか。
町工場のルーツは、そういう所にあるのかもしれない。


自衛隊の駐屯地や、少年鑑別所もある。 
平和台だけに、平和を守っています、ということなのか。


そもそも「平和台」という場所は多い。
鶴川にも「平和台」はあるし、千葉にもあった。 福岡には「平和台球場」があった。
同じ名前の場所が全国に幾つもあるのは珍しくない。

昔、僕が住んでいた東京都町田市三輪の由来は、奈良の三輪山だ。 美しい三輪山の風景に、よく似ていたかららしい。

一方、平和台というのは、いかにも新しい名前である。
戦後直後、平和の希求からあちこちで使われた名なのだろうか。


平和に、心穏やかに暮らしたい。