シェークスピア

http://observer.guardian.co.uk/uk_news/story/0,6903,1557964,00.html


やはりシェークスピアについても、このような本が出たか。
最近は政治と文学をつなげる研究が多い。過去の文学の政治性(党派性)を問うことは流行っている。政治思想史学は、政治パンフレットだけではなく文学にも光を当て始めた。David Norbrookの『Writing the English Republic: Poetry, Rhetoric and Politics, 1627-1660』(CUP 1999)はその代表的な作品だ。エキサイティングな本である。



一昨日、夢のなかにボッティチェリ(Botticelli)のla primaveraが現れた。彼女と会うことが出来て非常に嬉しかったのだが、その分悲しくもあった。再会のすぐ後の別れ。これで3回目だ。

Primaveraとは、僕が大学1年生のときに出会った。それ以来、彼女から様々なことを学んだが、その一つはシェークスピアソネットの素晴らしさだ。5年前の4月、電車のなかで彼女はソネット第15番が筆写された紙切れをくれた。その時自分で読んでみても、意味は全くつかめなかった。別の紙切れにあった彼女の解説によれば、"This is just a poem about aging and how as you age you don't necessarily lose your youth but gain so much more as life goes on and as you live more + more..."ということであった。


それから5年強。2年間の英国生活を通じてようやくソネットの良さを体感できるようになった。その素晴らしさは、恋をうたっているのに陳腐さというものが全くないことと、響きの素晴らしさにある。

イギリスにいたとき、残念なことにシェークスピアの芝居は一度しか観なかった。それはストラットフォードで上演されていた『間違いの喜劇(The Commedy of Errors)』という喜劇ものだった。下ネタが多く面白おかしい芝居だったが、何より舞台に流れる溢れんばかりのエネルギーと、科白の響きの美しさに感動させられた。
最近好きなソネットは、第18番である。 


Shall I compare thee to a summer's day?
Thou art more lovely and more temperate:
Rough winds do shake the darling buds of May,
And summer's lease hath all too short a date;
Sometime too hot the eye of heaven shines,
And often is his gold complexion dimm'd;
And every fair from fair sometime declines,
By chance, or nature's changing course untrimm'd;
But thy eternal summer shall not fade,
Nor lose possession of that fair thou ow'st,
Nor shall death brag thou wander'st in his shade,
When in eternal lines to time thou grow'st;
So long as men can breathe, or eyes can see,
So long lives this, and this gives life to thee.


最も有名なソネットの一つだが、やはりいい。美しい。

なぜ美しい「あなた('thee')」を、あんなに暑苦しい「夏」というものと比べる必要があるのだろう、と日本人の僕たちは思うかもしれない。なぜ「春」ではないのかと。
でも、英国の夏は美しいのである。もちろん、6月に30度を超える日があったりして、汗ばむ陽気のときも多々あるのだが、しかしそういう日でも木陰で広い空を眺めたり、陽を浴びながらサラサラと音を立てる木々の葉を見ていると、英国の夏の良さを感じられずにはいられない。憂鬱な天気の多い冬が長いだけに...

夜中、ひとり部屋のなかで声に出して読んでみると、ソネットは非常に味わい深い。季節の変わり目ということもまた、この詩に趣を加える。



これはMr. Peter Ghoshが教えてくれたことだが、マルクスは若い頃、大のシェークスピアファンだったらしい。ロマンチスト、マルクス! Ghosh先生も言っていたが、マルクスという思想家を知るうえで、これは重要なことだと思う。